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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)1271号 判決 1950年9月21日

被告人

安田稔こと

安徳守

主文

本件控訴は之を棄却する。

理由

弁護人橋本福松提出の控訴趣意書の要旨は

本件の犯行は被告人の姉成連珠の所為であるが、被告人は同人の罪責を負つて原審の判決を受けたところ意外にも過酷であつたので、ここに事実の真相を被歴する。而して右は再審の請求をすることができる場合にあたることを理由として控訴の申立を為し得る場合にあたるものと思料する。

というにあり、

検事は控訴理由なしとして棄却を求めた。

依つて按ずるに刑事訴訟法第四百三十五條第一項第六号によれば「有罪の言渡を受けた者に対して無罪若くは免訴を言渡すべき明かな証拠を新に発見したるときは再審の請求を為し得る」旨規定した趣旨は被告人が何等の過失なくして原審に於て提出し得なかつた証拠を該判決言渡後新たに発見したときを指称するに外ならない。故に被告人の如く他人の犯行と知りつつ、その刑責を自己に於て負担し、原審に於て甘んじて判決を受けたと主張する関係に於ては自己の無罪を立証すべき証拠を故意に提出しなかつたものと看るの外はない。従つて同條所定の條件を具備しないものであるから論旨は理由がない。

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